ある日あるとき

 

 天気予報では、今朝は霧が深いと言う。

高層ビル群が魔法のように消えてなくなる光景を見たくて、早速カーテンを開いてみた。

 そこにあったのはキリンの群れ。

窓越しに目が合うと、微笑みながら走り去って行った。

 キリン注意報だったのね。

 

     *

 

 寝不足なわけでもないのに、最近目の下にクマができるようになった。

出かける予定があるのに困るわ。

 イヤリングをつけながら思い出した。

そういえば、クマができるようになったのは、白い貝殻のイヤリングを落とした日から。

もうなくさないようにって、そっと教えてくれたのね。

 ♪ラララ……ってハミングしたら、安心したようにクマが消えた。

 

     *

 

 電話が鳴った。

「もしもし」

 返事がない。

「もしもし?」

 耳を澄ますと、微かに波の音が聞こえる。

海の近くからかけているのかな、と思っていたら、

「あなたも竜宮城に行きたい?」

「え?」

 意味が分からずにいるうちに、発信音だけが残された。

 あれは、カメからの電話だったのかもしれない。

 

続きは短篇集でどうぞ。

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