ケーキが一個
ケーキをもらった。大きな丸いケーキ。
真っ白い生クリームの上に、色鮮やかなフルーツがたくさん乗っている。
メロン、洋ナシ、パイナップル、モモ、キウィフルーツ、ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー……。
毎日少しずつ食べようかな。冷蔵庫に入れておけば、きっと三日は食べられる。
朝も昼も夜も、もちろんおやつも、ケーキ。ケーキ！ ケーキ!! なんて幸せな毎日。
それとも、もういらないっていうくらい、一度にたくさん食べてみようかな。
丸いケーキを直接フォークですくって食べるの。
ああ、そういうのって、お話の中でしか見たことがないもの。
トントン。ドアをノックするのと同時に、妹の声。
「お姉ちゃん。おやつだよ」
「うん。すぐ行く」
ここに、こんなにおいしそうなケーキがあるのに、
お母さんの用意したおやつを食べないと、怪しまれてしまう。
ドライアイスが溶けていないのを確かめてから、部屋を出た。
あんなに大きいんだから、妹と半分ずつ食べてもいいかなって、ちょっとだけ思った。
リビングにはお母さんはいなくて、代わりに妹の友だちが二人いた。
「こんにちは」
「お邪魔してます」
「いらっしゃい」
お姉さんっぽく挨拶した。だって、お姉さんだものね。
おやつは、おせんべいだった。
ポリポリと音を立てて食べながら、妹たちはマンガを読んでいる。
お母さんがいないときは、ちょっとくらいお行儀が悪くてもいいよね。
わたしも、同じようにおせんべいを食べながらマンガを借りて読んだ。そして、頭の隅で考えた。
おせんべいは好きだよ。飽きがこないしね。
でも、友だちに出すおやつとしては、地味じゃないかな。
続きは短篇集でどうぞ。