マリコさん

　　マリコさんは、この頃寝不足です。

寝不足というのはよくありません。

仕事でミスが増えるし、電車で居眠りして隣の人に寄り掛かってしまうし、何よりお肌の大敵です。

マリコさんは、毎朝洗顔する時に新しいにきびを発見しました。

昨日左の頬にできたと思ったら、今日は顎にできています。

おかげで最近は鏡を見るのが憂鬱になりました。

　マリコさんは毎日会社に行きます。

誰でもできる事務作業ですが、ほかにする人がいないので休むわけにいきません。

それに、マリコさんには楽しみもありました。

憧れの先輩に会えるのです。

営業部の彼はマリコさんより五歳年上で、女性社員に人気があります。

でも、マリコさんは恥ずかしくて言えないので知らん振りしています。

　ある日、マリコさんの耳に嫌な噂が入りました。

営業事務のアユミさんが、先輩と付き合っているというのです。

アユミさんはマリコさんより二歳年上で、社内で評判の美人でした。

マリコさんはがっかりしましたが、平静を装って仕事をしました。

おかげでまた寝不足になり、にきびも増えました。

　しばらくして、マリコさんはアユミさんと給湯室で一緒になりました。

先輩のことは諦めましたが、アユミさんの美しさの秘訣を教わろうと思いました。

「特に何もしていないけど……」

　美人の常套句が返ってきましたが、マリコさんは騙されません。

若い時ならともかく、ある程度の年齢で何もしないできれいなわけがないのです。

その秘密を教えたくないから、別に何もと答えるのだと、マリコさんは知っていました。

そこで、アユミさんをおだてたら、ローズビューティー社のサプリメントや化粧品のおかげで、夜ぐっすり眠れるし、

お肌もぴかぴかでいると白状しました。

　マリコさんは、早速会社の帰りにデパートの化粧品売り場に行きました。

ところが、ローズビューティー社の商品はどれも驚くほど高価で、今月のお小遣いでは買えません。

そこで、安眠効果があるサプリメントだけ買いました。

続きは短篇集でどうぞ。

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