空を走る
例えば朝。
黒猫のように神秘的な闇が、次第に隅に追いやられる。
抜け目のない光の天使たちは、カーテンの隙間ではしゃいでいる。
もぎたての朝は、黄金色に輝いている。
空が青いときの習慣。
昨日の雨のなごりの、小さな水溜りを駆け抜けた自転車の車輪は、
白いアスファルトの上に黒い線を描く。
雨は一粒一粒の小さな雫。
それが集まった海は、空を映す大きな鏡。
どちらも、もとは同じもの。
頬に当たる風が冷たい。
風を切って走っているとき、空の中を潜り抜けていることに気づいた。
信号待ちで、ふと見上げた空。
高くて深く青い世界。
手の届かないところにあると思っていた空は、指を伸ばせば、もうそこにあった。
月曜日の朝。
秒針の間を、忙しなさが駆け抜けて行く。
人は、爽やかなときを気にも留めず、無言で足早に通り過ぎる。
きっちり合わせたつもりの腕時計が、実は二十秒進んでいるとも知らずに。