「う」からの手紙
寒い毎日が続きますが、お元気でお過ごしのことと思います。
さて、例年通り厳正な審査をした結果、あなたは「今年一年がんばった人」に選ばれました。
ここに敬意を表します。
つきましては、ささやかな記念品をお送りいたしますので、どうぞお納めください。
う
年末の気忙しい時期に、こんな手紙を受け取りました。
差出人は「う」とだけ。
心当たりがありません。
定形サイズの白い封筒の中には、手紙のほかに薄い布にくるまれた小さな包みが入っていました。
これが記念品なのでしょう。
開けてみると、中から真珠の粒のようなものが零れました。
もちろん本物ではありません。
でも、それは氷のように冷たくて、朝露のように清らかな美しいものでした。
わたしは小さな粒を掌に乗せ、じっと見つめていました。
吸い込まれそうなほど透明な粒は、ささやかではなく、とても珍しいものでした。
こんなすてきなものをくれるのは、いったい誰でしょう。
わたしのことをちゃんと見ていて、がんばったと言ってくれたのは、どこの誰なのでしょう。
冬の日は暮れるのが早いので、あれこれしているうちに真っ暗になりました。
夕食の支度をしながら、ふと気がつくと、窓辺に置いた透明の粒が、それは見事に輝いていました。
ああ、これはきっとお月さまが零された涙なのだ、とわたしは急に腑に落ちました。
わたしがしている細々とした誰にも気づかれないような仕事を、お月さまはちゃんと見ていて、誉めてくださったのでしょう。
まんまるお月さまの中にいる、うさぎに手紙を書かせて。