三分クッキング
この作品は小学館「きらら」携帯メール小説大賞第１７回月間賞で
最終選考（30篇）に残りました。
家に突然、お腹を空かせた怪獣が訪ねてきたら、どうしますか？
「慌てて追い出して、ドアを閉めます」
「怒ってドアを壊されますよ」
「いい子だからよそへ行って、と言います」
「自分だけよければいいんですか」
「嘘だと思います」
「それではお話になりません。きちんと考えてください」
「えー……だって、考えたことないから……」
「ぐずぐずしている間に、あなたが食べられてしまいますよ」
「お腹が空いているんだから、何か食べさせればいいと思います」
「正解です」
では、何を食べさせればよいでしょう？
「甘いチョコレートをあげると、きっと喜びます」
「それは、あなたの好物です」
「家にあるものなら、なんでもいいと思います」
「でも、手づくりのものしか食べないんです」
「嘘に決まっているから、考えられません」
「万が一、という言葉を知っていますか」
「えー……、何かヒントをください」
「怪獣は、三分間しか待てません」
「おにぎりがいいです。簡単につくれて、みんなが好きです」
「正解です」
いいですか。お腹を空かせた怪獣は、突然やって来ます。
しかも、怪獣は三分間しか待てませんし、手づくりのものしか食べません。
緊急事態を乗り切るには、おにぎりを出すのが一番です。
素早くおにぎりを出すために、冷蔵庫には冷ご飯を常備しておきましょう。
新たに炊くと一時間近くかかり、その間に怪獣が大暴れしてしまいます。
レンジでご飯を温めて、きゅっと握れば、ほら心のこもった手料理のできあがりです。
ご飯しかなければ塩むすびでもいいですが、できれば梅干やたらこ、しゃけなどもあるといいでしょう。
ただし、一度あげるとあなたの家に住みついてしまうことがありますから、怪獣が来ないように祈るのも忘れずに。