いつも、お姫さま
「モモちゃん、シンデレラ！」
「ヒロちゃんは、しらゆきひめ！」
ようちえんのかたすみで、モモちゃんたちが、またおひめさまごっこをしているよ。
モモちゃんは、シンデレラがだいすき。
うつくしさのせいでころされるより、いまはくるしくても、あとでしあわせになれるほうがいいんだって。
このおひめさまごっこには、おうじさまがいない。いつもどろんこのおとこのこは、おうじさまにはみえないものね。
でも、ケンちゃんが、ときどきいうの。
「オレが、おうじさまになってやるよ」
って。そのたびにモモちゃんは、
「おうじさまは、しろいうまにのってくるのよ」
ってわらうから、ケンちゃんはすこしかなしそうなかおで、すなばにもどってゆく。
シロツメクサのはなかんむりも、みせないままで。
幼稚園も学校も卒業して働くようになった今、モモちゃんはもうお姫さまごっこなんてしない。
でも、いつかきっと幸せになれるって、心の片隅で信じている。
そこでは、四歳のままのモモちゃんが、王子さまをじっと待っている。
この間、小学校の同窓会があった。
体は大きくなったのに、みんなどこか面影が残っていて、モモちゃんたちは一瞬で子どもにかえった。
会社で苗字にさんづけで呼び合う毎日なのに、ここでは幼い頃のあだ名が自然に飛び交った。
モモちゃんは、ヒロちゃんとおしゃべりしている時に、誰かの視線を感じた。
そちらに顔を向けると、ひとりの男の人と目が合った。いたずらそうな顔。あ！ って思っていたら、
「モモちゃんだろ？」
って。ケンちゃんだった。
続きは短篇集でどうぞ。