メリーとエレーヌ

　村外れに、二軒の家が建っていました。

赤い屋根の家にはメリー、青い屋根の家にはエレーヌが住んでいます。

　メリーは、ほがらかな娘です。エレーヌは、おとなしい娘です。

格は反対でしたが、二人はとてもなかよしでした。

　春になると、エレーヌの庭にたくさんの花が咲きます。エレーヌは、花を育てるのがじょうずです。

　メリーは、町へ花を売りに行きました。

「花はいりませんか？　きれいな花ですよ」

　町の人たちは、メリーが来るのを楽しみにしていました。

「まあ、きれい。今年も、メリーの花の季節が来たわね」

「わたしじゃなくって、エレーヌの花ですわ。ジャクソンのおくさん」

「ああ、そうだったわね。

でも、わたしたちはエレーヌに会ったことがないから、メリーの花のような気がしてしまうのよ」

　エレーヌは、知らない人と話をするのが苦手なので、メリーが花売りに行くのです。

　秋には、メリーの庭にあるりんごの木に、たくさんの実がなります。

メリーはりんごを収穫すると、エレーヌのところに持って行きます。

エレーヌは、ジャムをつくるのがじょうずなのです。

　メリーは、町へジャムを売りに行きました。

「ジャムはいかがですか？　おいしいりんごジャムですよ」

　みんな、よろこんで買ってくれました。

「今年もまた、メリーのジャムが食べられるのね」

「メリーの、じゃなくて、メリーとエレーヌのジャムですよ。スミス夫人」

「ああ、そうね。メリーのりんごを、エレーヌがジャムにするんだったのよね」

　こんなふうに、メリーはエレーヌのことをみんなに話して聞かせました。

メリーは、何でもじょうずにできるエレーヌが自分の友だちなのが、とても誇らしかったのです。

エレーヌも、メリーから町の人たちの様子を聞くのを楽しみにしていました。

続きは短篇集でどうぞ。

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