るるちゃんのポケット

るるちゃんは、おばあちゃんがだいすきです。

おばあちゃんも、るるちゃんがだいすきです。

でも、おばあちゃんは、とおくにすんでいるので、なかなかあえません。

ひこうきにのって、でんしゃにのって、えきについたら、くるまにのって……。

おかあさんは、

「いなかにいくのは、ひとしごとだわ」

と、いいます。

だから、るるちゃんは、一ねんのうち、おしょうがつと、なつの二かいだけしか、

おばあちゃんのいえにいかれないのです。

おばあちゃんは、るるちゃんがあそびにいく、一かげつもまえからそわそわします。

「るるちゃんは、なにがたべたい？」

「るるちゃんねえ、エビフライがすき」

「エビフライね。はいはい」

「あとね、おさかな。おばあちゃんのいえのおさかな、おいしいんだもん」

「おさかなね。おばあちゃんもすきよ」

うみのちかくにすむおばあちゃんは、でんわのむこうで、るるちゃんがすきなたべものをメモしています。

「おばあちゃん、はやくあいたいね」

「そうだねえ。あと三十かいくらいねると、あえるね」

「じゃあ、るるちゃん、いっぱいおひるねする！」

おひるねのきらいなるるちゃんのことばに、おばあちゃんは、なみだがでるほどわらいました。

そんなふうに、るるちゃんとおばあちゃんは、ときどき、でんわでたのしくおしゃべりしていました。

「はやくあいたいね」

「いっぱいあそぼうね」

と、やくそくしていました。

ところが、ことしのなつ。

おばあちゃんのいえに、でかけようとしたそのあさに、るるちゃんはねつをだしました。

ゆうべまで、げんきにうたっておどっていたのに。

おかあさんは、おばあちゃんにでんわをかけました。

「るるちゃんが、きゅうにねつをだしたから、いかれないの」

おばあちゃんは、どんなにがっかりしたでしょう。

でも、るるちゃんのからだのことがしんぱいなので、

「なおったら、おいで」

とだけいいました。

るるちゃんは、ねつだけでなく、からだにぶつぶつもでてきました。

おいしゃさんでみていただくと、みずぼうそうだとわかりました。

みずぼうそうは、なおるまで二しゅうかんくらいかかります。

そのあいだ、そとにでてはいけません。

おとうさんは、そんなにおやすみはとれません。

ことしのなつは、おばあちゃんのいえには、いかれないことになりました。

るるちゃんはがっかりしましたが、おばあちゃんはもっとがっかりしました。

とうもろこしや、すいかを、たくさんかっておいたのです。

はなびもよういしてありました。

おばあちゃんは、いちにちぼんやりとすごしました。

ひとりでゆうはんをたべると、おしいれから、ぬののはいったふくろと、おはりばこをとりだしました。

おばあちゃんは、おさいほうがとくいなのです。

おばあちゃんは、るるちゃんにスカートをつくろうとおもいました。

それも、じぶんとおそろいの。

そのよる、おばあちゃんは、おそくまでおきていました。

それからなんにちかして、るるちゃんのいえに、たくはいびんがとどきました。

おばあちゃんからです。

おかあさんにはこをあけてもらうと、なかからそらいろのスカートがでてきました。

もようはありませんが、おおきなポケットがついています。

ねつのさがったるるちゃんは、さっそくスカートをはいてみました。

くるりとまわると、スカートのすそが、ドレスのようにふわりとふくらみます。

「おばあちゃん、どうもありがとう」

るるちゃんは、おばあちゃんにでんわをかけました。

「もう、ねつはさがったの？」

「うん。ぼつぼつはあるけど、おねつはないよ」

「そう。よかったこと」

それから、おばあちゃんは、ちょっとまじめなこえでいいました。

「あのね、るるちゃんのポケットとおばあちゃんのポケットは、つながっているのよ」

「え？」

るるちゃんは、びっくりしてポケットをのぞきました。

ポケットのなかは、ふかいあおです。

まるで、おばあちゃんのいえのちかくの、うみみたいないろです。

「おばあちゃん。ポケットのなかに、うみがあるよ」

「そう。うみは、せかいじゅうにあるけど、みんなつながっているの。うみは、ひとつなのよ。

それに、そのスカートはそらいろでしょう？

るるちゃんのところのそらと、おばあちゃんのいるところのそらも、つながっているのよ。

はなれていても、おばあちゃんはいつも、るるちゃんのことをかんがえているからね」

「うん！」

るるちゃんは、おばあちゃんのこと、だいすきだなとおもいました。