さっちゃんのかさ
さっちゃんは、かさをかってもらいました。
きいろに、しろいみずたまもようがかいてあって、ボタンをおすと、ぱっとひらくかさです。
さっちゃんは、いえのなかで、なんども、かさをひらいたりとじたりしました。
でも、さっちゃんがかさをかってもらってから、まだいちども、あめがふりません。
「はやく、あめがふらないかなあ」
さっちゃんは、まいにち、そらをみあげていました。
あんまりあめがふらないので、さっちゃんは、はれたひに、かさをもって、ひとりでにわにでました。
ほそくまいたかさを、じめんにたてていると、てんとうむしがのぼってきました。
「あれ? てんとうむし、かさのこと、きと、まちがえてるのかな」
さっちゃんは、くすくすわらいました。
おどかさないように、しずかにみていると、てんとうむしは、てっぺんまでのぼってきました。
そして、おひさまにむかって、ぱっととびたちました。
あついひです。
さっちゃんは、ボタンをおして、かさをひらきました。すると、かげができました。
「あ。なんか、ちょっとすずしくなったかんじ」
さっちゃんは、かさをくるくるまわしました。かげのかさも、くるくるまわります。
「おもしろい」
さっちゃんは、にわをあるきました。かげも、いっしょについてきます。
「かげさんは、まねっこだ」
さっちゃんが、かだんのまえまでくると、ゆりのはなに、かさのかげがかかりました。
さっちゃんは、かさをちかづけたり、とおざけたりしました。
そのたびに、ゆりのはなには、おひさまがあたったり、かげったりしました。
「はれのひには、おひさまがふっているんだね。めには、みえないけど」
さっちゃんは、そんなことをかんがえました。
続きは短篇集でどうぞ。