よるのスーパーマーケット


ここは、よるのスーパーマーケット。

おきゃくさんも、てんいんさんも、だれもいないおみせのなか。

おかしも、おにくも、おさかなも、みんなしずかにねています。

ところが、やさい・くだものうりばから、ひそひそごえがきこえてきます。


「あーあ、こんやもここでねるんだね」

ふてくされているのは、キャベツくん。

「ぼくたちは、しんせんなのがいちばんおいしいのにね」

トウモロコシくんが、ひげをブンブンふりまわしています。

「そうそう、かんづめなんかとはちがうんだから」

スマートなキュウリさんは、せなかをぴんとのばしています。

「わたし、レタスくんといっしょにサラダになりたいわ」

プチトマトちゃんが、かおをまっかにしていうと、

「だいじょうぶさ、ベイビー。ぼくたちは、いつもいっしょだよ」

ちょっとキザなレタスくんがこたえます。

「ぼくは、マーボーナスになるのがゆめなんだ」

つやつやほっぺのナスくんがいえば、

「わたしは、ごまあえにしてもらいたいわ」

ホウレンソウさんが、まけずにいいます。


「みなさん、おりょうりしてもらわなくちゃ、おいしくなれないのね」

やさいたちのおしゃべりをきいていた、マスカットさんがいいました。

「わたしたちは、だれのちからをかりなくても、とってもおいしいの。ねえ」

バナナくん、オレンジちゃん、スモモちゃんもうなずきます。

「なかでもスイカさんは、なつのおうさまですものね」

マスカットさんは、じぶんのことのようにスイカさんをじまんしています。

ところが、スイカさんのいうことには、

「けっ。くだらねえ。おれはひとにくわれるのなんか、まっぴらさ」

「えー!?　どうして？」

やさいもくだものも、みんなびっくりしています。

だって、たべものはにんげんにおいしくたべてもらえるのが、いちばんのしあわせなのに。

「じゃあ、スイカさんのゆめって、なんですか？」

ジャガイモくんが、ききました。

「おれのゆめ？　そりゃあ、きまってるよ。トラになることさ」

「トラ？　トラって……」

「そう。どうぶつのトラだよ。

おれさまのシマシマ、これはただのかざりじゃないんだぜ。これこそ、トラのたまごってしょうこだよ」

「へえ……」


そのよる、くだものややさいたちは、それぞれすてきなゆめをみました。

たくさんのはっぱをひらいてはねにして、そらをとぶゆめをみたのは、キャベツくん。

きみどりいろのかわをぬぎすて、ハーモニカになっておんがくをかなでるトウモロコシくん。

りゅうこうのふくをきて、せすじをのばし、モデルのようにあるくキュウリさん。

レタスくんのおふねにのって、みずうみをただようプチトマトちゃん。

やきゅうのボールになって、こどもたちとあそぶジャガイモくん。


みんな、あしたのよるも、ここでおしゃべりして、ゆめをみてもいいかなと、おもっています。