つきよのたぬき

 

 おつきみやまは、たぬきのやまでした。

たぬきたちは、まんげつのよるになると、みんなで、ばけくらべたいかいをします。

 いちばんちいさなたぬきのポコは、まだじょうずにばけられません。

たいかいのときには、しっぽをかくすことができずに、みんなにわらわれます。

ポコは、くやしくてたまりません。

 いつもゆうしょうしているのは、ポンタという、ふとっちょたぬきでした。

このよるも、あたりまえのように、ポンタがかちました。

ばけくらべたいかいのあとのえんかいで、よっぱらって、いいきぶんでいるポンタをよこめに、

ポコはあることをかんがえました。

 つぎのひ、ポコはおさけのびんをかかえて、ポンタのいえにいきました。

ポンタは、ポコのさしいれのおさけに、おおよろこびです。

ポンタのきげんがいいことをかくにんしたポコは、おさけをつぎながら、ポンタにききました。

「ねえ、ポンタのおじさん。どうしたらじょうずにばけられるの? おしえてよ」

 ポンタは、あいてがこだぬきだと、あまくみたのでしょうか。

おさけのおれいのつもりだったのでしょうか。こっそりおしえてくれました。

「ばけくらべたいかいは、いつもまんげつにやるだろう?

おれは、みんなよりはやくいって、いけにうつったつきをのんでいるのさ。

そうすると、うまくばけられるんだよ」

 ひみつをしったポコは、こおどりしていえにかえりました。

 さて、つぎのまんげつのことです。ポコはポンタよりもはやく、いけにいきました。

ところが、あんまりはやくついたので、まだつきがでていませんでした。

つきがでるのをまっていると、ポンタがきてしまいます。

けんかにはじしんがないポコは、しかたなく、いけにうつったゆうひをのみました。

 よるになり、ばけくらべたいかいがはじまりました。

ポコは、いつもよりじょうずにばけられましたが、ゆうしょうは、やっぱりポンタでした。

がっかりしたポコは、いえにかえるとちゅう、いけにいってみました。つきがうつっています。

「あれ? ポンタがのんだとおもったのに、まだ、つきがあるじゃないか」

 ポコは、いけのみずをのみました。すると、なんだか、からだがふわふわしてきました。

たいようとつきがまざったポコのおなかは、ふしぎなちからをもつことができたのです。

ポコは、ひみつのさくせんをたてることにしました。

 そのまたつぎの、ばけくらべたいかいのよるです。

ポンタがいけにいくと、つきがありませんでした。

「あれ? きょうは、くももないのに、どうしたんだろう」

 ポンタはしかたなく、なにものまずに、たいかいかいじょうにいきました。

かいじょうでは、みんながおおさわぎしていました。

「どうしたんだい?」

 ポンタがきくと、ちょうろうだぬきが、そらをゆびさしました。

みると、ポコがつきのうえにすわっています。

「すごいなあ。こんやのゆうしょうは、ポコだ」

 みんなが、てをたたいています。ポコは、そんなポンタにむかって、

「よっぱらいのふとっちょさん。おさけばっかりのんでいると、ほかのものをのめなくなるよ。

いけにうつるのは、つきだけじゃないんだからね」

と、あかんべえをしました。

ポンタは、ポコにひみつをおしえたことを、こうかいしましたが、おそすぎました。

そして、こんやはいけのつきがなかったことをおもいだして、

こんどからはじぶんもつきをのみほそう、とちかいました。

 

 さて、つぎのばけくらべたいかいは、いったいどちらがかつのでしょうか?

つきは、きょうもにっこりとわらって、おつきみやまをてらしています。

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