うさぎ
あさ、めがさめたとき、ジュンはなんとなく、からだがだるいかんじがしました。
ふとんのなかでごろごろしていると、おかあさんがやってきて、
「はやくしたくをしなさい」
と、いいました。
「あたまがいたい」
ジュンがいうと、おかあさんはおでこをさわって、
「あら、おねつがあるみたいね」
と、たいおんけいをさがしはじめました。ジュンは、おかあさんのせなかに、
「ようちえんは、どうするの？」
と、ききました。
「ねつがあったら、いかれないわね」
あったあった、とつぶやきながら、おかあさんにわたされたたいおんけいは、
ひやっとつめたくて、それだけで、ジュンのからだは ちぢまってしまいそうでした。
「きちんとはさんで、五ふんはかるのよ」
ジュンは、とけいのはりをながめながら、
こうしてみているときには、はりは、わざとゆっくりうごくみたいだなと、おもいました。
じっとみていると、なんだかめがまわりそうです。ジュンがめをとじてしばらくすると、
「はい、だして」
と、おかあさんがいいました。ジュンは、あたたまったたいおんけいをわたしました。
「三十八ど二ぶあるわ。きょうはおやすみね」
そういわれると、ジュンは、すごくぐあいがわるくなったようにかんじました。
「ごはんは、たべられる？」
しょくよくは、あまりないようです。ジュンがくびをよこにふると、
「じゃあ、りんごをむいてあげるから、まっていてね」
おかあさんは、だいどころにたっていきました。ジュンは、
（おやすみするのが、ようちえんのクリスマスかいがおわったあとで、よかった）
と、おもいました。
しばらくすると、おかあさんが、りんごをもってきてくれました。
「わあ、うさぎだ」
しろいおさらにのったりんごは、あかいみみをぴんとたてた、うさぎのようにみえました。
続きは短篇集でどうぞ。