うそつき

　おかあさん、ねえ、きいてよ。ヒロシくんったら、いっつもうそつくんだよ。きょうも学校で、

「オレ、さかあがりがとくいだぜ。二十かいつづけてやるなんて、おちゃのこさいさいへのかっぱー」

なんてじまんするから、休みじかんにやって見せてっていったの。

そうしたら、きょうはこゆびにけがしているからダメ、だって。ほうたいもばんそうこうもしてないくせにね。

　ユキちゃん、ちゃんと手をあらったの？

　あらったよ（ちゃんとじゃないかもしれないけど、あらったもん）。

それでね、おかあさん。ヒロシくんったら、きゅうしょくのニンジンも大すきだっていうんだよ。

カレーのニンジンはあたしだってたべられるけど、にものの大きいのはみんなもきらいなのに、

ヒロシくんは「オレ、ニンジンだけでもへいきだよ」って。

きょうのきゅうしょくはにものじゃないから、オレのすごさを見せられなくてざんねんだなあ、なんていうの。

でも、ヒロシくんがニンジンをのこしているの、あたし見たことあるんだよ。

　ユキちゃん、スパゲッティはちゃんとフォークでまいてたべなさいね。

　うん（スパゲッティっておいしいんだけどめんどうくさいから、すきなのかきらいなのかわかんないな）。

あのね、おかあさん。ヒロシくんって、ゆめで見たこともほんとうのことも、おんなじようにはなすんだよ。

オレ、空とべるぜっていうけど、そのあとちっちゃなこえで、ゆめの中ではねって。そんなの、あたしだってできるよ。

もう、ヒロシくんとはなしていると、このスパゲッティみたいに、どこからがうそでどこからがほんとうか、わかんなくなっちゃうよ。

　ユキちゃん、ヒロシくんってだれ？

　ん？　あたしのゆめにいっつも出てくる男の子。それでね、おかあさん。ヒロシくんってばね……。