きゅうにひえこんだ夜のことです。

その夜は、一年のうちで、もっともたくさんのながれ星が見られる日でした。

子どもべやのまどから、空を見上げている二人の子どもがいました。

「あー、またきえちゃった。

ながれ星に三回ねがいごとをするなんて、むりだよね、お姉ちゃん」

「だいじなおねがいは、サンタさんにしたほうが、いいのかもしれないわね。

さぁ、もうねる時間よ」

お姉さんが明かりをけした後も、男の子はなかなかねむれずにいました。

 

そのながれ星の中に、まだ赤ちゃんの星がいました。

ママといっしょにいたかったのに、まちがえて、ちきゅうにおちてしまったのです。

赤ちゃん星は、おちたしゅんかん、

男の子の家の出まどにおいてあった、おもちゃのツリーにしがみつきました。

ながれ星は、空からおりてきたさいしょの夜だけ、どこにでも行かれる力をもっているからです。

赤ちゃん星がとまると、おもちゃのツリーはキラキラとかがやきました。

「どうしたの?」

「もう朝なの?」

ツリーのかざりのクマや小人、サンタやトナカイたちは、まぶしさに目をさましました。

へんじはありません。シンとしずまりかえった夜の中に、小さななき声が聞こえていました。

この家の子どもの声ではないようです。

「だれだ?」

サンタの人形が聞きました。すると、てっぺんの星かざりから

「ぼく、ママのところに帰りたい」

という声が聞こえました。

みんなが見たのは、小さな青い星がおもちゃの星かざりにしがみついて、

ないているすがたでした。

「きみ、どこから来たの?」

クマがやさしく話しかけました。

「空から」

「そうか、今日はりゅうせいぐんの日じゃった」

もの知りのサンタが、一人でうなずいていました。

「りゅうせいぐん?」

みんな、首をかしげました。

「そうじゃ。毎年このじきになると、空にはたくさんのながれ星が見られるんじゃ。

その星は、ツリーのかざりになるんじゃよ」

「へぇ、じゃあ、この子もそうなの?」

赤ぼうしの小人は、青い赤ちゃん星をめずらしそうにながめました。

赤ちゃん星は、うつむいて小さな声で話しました。

「ぼく、キララ。まだ赤ちゃんだから、来年来るはずだったのに、まちがえておちちゃったの。

ママのところに帰りたい」

そう言うと、なみだがポロンと二つぶこぼれました。

おもちゃたちは、どうしたらいいか、そうだんしました。

「もうここに来たんだから、あきらめてオイラたちといっしょに、くらすのがいいよ」

と言ったのは、黄色いぼうしの小人です。

「でも、こんなにいつまでもないていたら、人間に気づかれてしまうわ」

しんぱいしたのは、ピンクのドレスの人形です。

「空に帰してあげたいけど、どうしたらいいかな?」

みどりのぼうしの小人が、うでぐみして考えました。

「思いっきり高くなげたら、どうかな?」

赤ぼうしの小人が言いました。

「そうね。おちたばかりだから、まだまにあうかもしれない。やってみましょう」

ピンクのドレスの人形がさんせいすると、みんなもそれがいいと言いました。

それを聞いて、キララもやっとなきやみました。

まどをあけると、つめたい風がふきこんできました。

おもちゃたちは、さむさにブルッとふるえました。

みんなは、キララのまわりでかたをよせあっていました。

なつかしい夜空が見えたため、キララは少しほほえみました。

「じゃぁ、いくよ。一、二の三!」

小人がキララを空になげ上げました。

みんなは、いっせいに上を見ました。けれど、すぐにまたおちてきました。

「だめだあ」

「じゃあ、ぼくがやってみるよ」

クマが、はりきって前に出ました。

「いいかい。それっ!」

さっきよりは長く上がっていたけれど、やっぱりおちてしまいます。

一番大きなクマにできないのなら、もうこのほうほうはダメでしょう。

「どうしたらいいかな」

ますますかなしそうな顔をしているキララのまわりで、おもちゃたちは頭をかかえました。

その時です。

「ぼくにやらせて!」

へやのすみから、だれかが言いました。

声のぬしは、このへやでねむれずにいた男の子でした。

男の子は、さっきからこのこうけいをだまって、ワクワクしながら見ていたのです。

もしかしたら、ゆめではないかと思いながら。

「しまった!」

黄色ぼうしの小人が、小さくしたうちしました。

おもちゃが動いているところを子どもに見つかるなんて、もっともいけないことです。

でも、もう気づかれてしまったのならしかたありません。

「まあ、今日はとくべつな夜だから……」

とサンタがブツブツ言っています。

そんなことにはおかまいなしに、男の子が言いました。

「ぼく、さっきながれ星におねがいしようとしていたけど、三回も言えなかったんだ。

だけど、みんなで言えば、できるかもしれないよね。

キララを空に帰してって」

おもちゃたちは、それはいい考えだと言いました。

そこで、みんなでじっと空を見上げ、手をくんで、

「キララを空に帰してあげてください」とおねがいしました。

でも、なかなかうまくいきません。

キララがなきそうになったころ、ひときわ大きなながれ星が、空をよこぎりました。

「ママ!」

キララがとびあがったのと、

「キララを、ママのところに帰してあげて!」

とみんながさけんだのは、同時でした。

ながれ星はすーっとおりてきて、キララをかかえて、空にのぼって行きました。

「みんな、どうもありがとう。今年はすてきなクリスマスをすごせますように」

キララのママのやさしい声が夜空にひびくと、町中のがいろじゅに明かりがともりました。